こんにちは、MATTU(@sunmattu)です。
大画面を折りたたんで、コンパクトに持ち運べるPCって、実用的ですよねぇ。
スマホでは複数メーカーが出していますが、PCでも大画面で動画を見たり、作業したりといろいろなことをしたいと、夢がふくらみます。
この夢が現実になる日がついにきました。
ASUSが、WindowsタブレットPC「ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702AA」を2022年12月に発売開始しました。
画面折りたたみPCとしては、LenovoがThinkPad X1 Foldを先行して発売していますが、より大きく、スペックも実用的で、いろいろ考えられたPCに仕上がっているように感じます。
今回は、ASUS Zenbook 17 Fold OLED UX9702AAを、メーカー様よりお借りしましたので、じっくりレビューしていきます。
商品貸出:ASUS JAPAN株式会社
開くと17.3インチ!迫力の大画面を持ち運べる神PC
Zenbook 17 Fold OLEDの最大の魅力は、「出先でも大画面を利用できる」点でしょう。
大きなカバンを必要とせず、通常サイズのリュックサックで、大画面17.3インチを持ち運べます。
広げると17.3インチ。迫力がすごい!
Zenbook 17 Fold OLEDの本体を広げると、17.3インチの巨大ディスプレイが広がります。
ノートPCとしては、この大きさはすごすぎますよね。
しかも「OLED」有機ELですし、映像もめちゃくちゃきれいです。
PCの折り目部分は、うっすらと見えるといえば見えるのですが、PCを使っている最中は全然気になりません。
黒背景にすると、若干わかるかな?という程度。ほぼ気にしなくていいと思います。
横向き2画面でも、折り曲げて縦向き2画面でも
Zenbook 17 Fold OLEDは、ちゃんとマルチタスクでこなすのに最適なスペックに仕上がっています。
スペックやベンチマークについては後述しますが、横向きで2分割で使っていても、ちょっと縦長な画面ではありますが便利に利用可能です。
縦で2分割で使いたい、という場合も、折り曲げた状態のまま利用することもできます。
窓際などは少し反射で下半分は見えにくいかもしれないですが、端末を体に近づければ結構使えます。
もちろん、別途スタンドなど持ち歩けば、フラットな状態で縦2分割で使うことも可能です。
柔軟に、縦でも横でも使えるというのは、折りたたみPCのスタイルとしては非常に便利な点だと思います。
ちゃんと考えられた、自立しても使いやすい構造
背面には、折りたためるスタンドがついています。
スタンドで立てかけることで、横向きであればほかに部品を必要とせず、外出先でも自立させることができます。
また、開いた状態では下部の接地面に出っ張りがついています。
PC全体が接地されることを防いでくれるのは非常にうれしいところです。
また、USBポートは開いた場合、左側面と上面に1つずつ、合計2つあります。
2つのUSBポートは、形態を変えてもふさがれることなく、常に2つを利用可能です。
両方を利用しようとすると、片方はPCの上面からケーブルが伸びるような構造になるので若干見た目としては不自然ではありますが、USBハブを持っていなくてもある程度使えるのは非常にうれしいです。
(ただ、欲を言えばあと最低1個、USBポートが欲しい気はします)
キーボードはBluetooth接続。打ちやすさは上々、マウスは別にあったほうがいいかも
付属キーボードは、Bluetooth接続で利用する形になっています。
キーボードにはUSB Type-C端子がついており、充電が可能。
Bluetoothも2台を切り替えられるようになっているようで、スマホとPCなど、複数台で利用することもできます。
キーボードの打ち心地は上々です。
キーボードの厚みに制約があるため、ストロークがふかふかなものとは異なりますが、どちらかといえばSurfaceキーボードよりちょっと柔らかめの感じ。
机に置いて使う分には非常に便利です。
また、今回キーボードはUS配列です。
個人的には、US配列が最も理にかなっていると思っているUS配列信者なので、めちゃくちゃうれしいポイントです。
ただし、通常の日本語キーボード(JIS配列)に慣れている方は、記号の配列が若干異なりますので、注意してくださいね。慣れたらUSキーボードが最強だとわかると思います!
トラックパッドのほうが若干曲者な感じがします。
指の腹で場所を決め打ちしてクリックしようとすると、多少揺らいで別の場所で止まる、といった挙動を起こす場合が、私の機体では生じていました。
マウスは、薄いSurface Arc Mouseなどでいいので別に持っていたほうが安心・便利だと思います。
省スペースやサクっと作業したいなら、普段のノートPCスタイルでも!
新幹線や飛行機での移動中だったり、広げずにサクッと作業したい場合には、普段と同様のノートPCスタイルでも利用できます。
キーボードは挟んだまま、画面を開けるだけ!
Zenbook 17 Fold OLEDを閉じたときの側面は以下の通りです。
少し分厚いのですが、閉じる際には折り目のところにそのままBluetoothキーボードを挟むことができます。
Bluetoothキーボードは、画面の片側と磁石でくっついています。
そのまま開けば、Bluetoothキーボードでおおわれている部分の画面は非表示となり、見た目は普通のノートPCと同じ。
12.5インチのノートPCとして、普通に利用可能です。
大きさが手ごろで、ひざに乗せて使う場合にはちょうどいいのがうれしいところ。
折り目のカーブしているところにWindowsのタスクバーがあたるので、角度によってはキーボードの角に隠れて見にくいときはあるのですが、個人的にはあまり不便を感じません。
前述の通り、マウス操作だけはトラックパッドではなく別にマウスを持っているほうが使いやすい感じはあります。
スクリーンキーボードでも、予想以上に快適に打てる!
キーボードは付属のBluetoothキーボードだけでなく、スクリーンキーボードを使うこともできます。
Bluetoothキーボードを外せば、画面いっぱいにスクリーンが表示されます。
テキストボックスなど、テキストを入力可能なエリアをタップすると、自動的にスクリーンキーボードが表示されます。
案外サクサクと入力できますし、キーボード上部に表示される予測変換をPCで使えるのは新鮮です。
たまにブラインドタッチしようとすると予測変換を誤タッチすることがあるので、キーボードは見ながら打つスタイルのほうがいいのかもしれません。
キーボードの高さがあとちょっとあれば打ちやすいかな、とは思います。
が、普通のPCのようにスクリーンキーボードで入力できるのは、画面折りたたみPCならではと思います。
ASUS Zenbook 17 Fold OLEDは、ついに胸を張っておススメできるスペックを実現!
画面折りたたみPCとしては、他社のLenovo ThinkPad X1 Fold(13.3インチ)が2年程度先行して発売されていましたが、試みとしては素晴らしいものの、動作があまりにもモッサリしており、普段利用には不十分な端末になっていました。
ASUS Zenbook 17 Fold OLEDは、ついに普段使いでも便利なスペックに進化しています。
Zenbook 17 Fold OLEDのスペック
項目 | Zenbook 17 Fold OLED |
---|---|
大きさ | 折りたたみ時 幅193.5x奥行287.6x高さ23.1mm~34.4mm 展開時 幅378.5x奥行287.6x高さ13.3mm 1.53kg(BTキーボード含め1.83kg) |
CPU | Intel Core i7-1250U |
メモリ(RAM) | 16GB |
ストレージ | SSD 1TB |
画面 | 17.3インチ OLED 2560×1920 |
GPU | CPU内蔵 |
Wi-Fi | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax(5GHz対応) |
Bluetooth | Bluetooth 5.1対応 |
フロントカメラ | 491万画素赤外線(IR)カメラ |
サウンド | クワッドスピーカー(1Wx4)/アレイマイク内蔵 |
インターフェース | USB Type-C(Thunderbolt 4) x2、マイク/ヘッドホン・コンボジャックx1 |
付属品 | ACアダプター、製品マニュアル,製品保証書 Bluetoothキーボード、USB CtoAケーブル、専用スリーブ |
価格 | 649,800円(税込) |
ベンチマーク測定結果
簡単にベンチマーク測定結果をご紹介します。
CineBench R23
CineBench R23は、CPUの処理性能を測ることができます。
機種 | スペック | CPU (Multi Core) | CPU (Single Core) | MP Ratio |
ASUS Zenbook 17 Fold OLED | Core i7-1250U | 5528 | 1564 | 3.53 |
Lenovo ThinkPad X1 Fold(13.3) | Core i5-L16G7 | 1735 | 730 | 2.38 |
Surface Laptop Studio | Core i7-11370H GeForce RTX3050Ti | 5286 | 1271 | 4.16 |
Apple MacBook Pro M1 | Apple M1 | 6706 | 1445 | 4.64 |
ASUS ZenBook Duo UX482 | Core i7-1165G7 GeForce MX450 | 4567 | 1404 | 3.25 |
(参考) GALLERIA ZA7R-R37 | Ryzen 9 5900X GeForce RTX3700 | 20623 | 1575 | 13.09 |
スペックにGPUも記していますが、CineBenchの測定にはCPUの性能が出ているはずです。
13.3インチのThinkPad X1 Foldでは圧倒的に足りなかったCPU性能が、きちんと出ているのがわかります。
高性能なSurface Laptop Studioに搭載のCore i7-11370Hと同等出ており、非常に便利に使えそうです。
PassMark Rating(PerformanceTest 10.2)
機種 | Passmark Rating | CPU Mark | 2D Graphics Mark | 3D Graphics Mark | Memory Mark | Disc Mark |
ASUS Zenbook 17 Fold OLED | 3994.6 | 12851.8 | 508.9 | 2388.2 | 2349.2 | 20536.9 |
ThinkPad X1 Fold(13.3) | 1062.2 | 3741.4 | 119.3 | 417.0 | 1441.1 | 11743.8 |
Surface Laptop Studio | 3265.3 | 12392.4 | 310.6 | 6284.9 | 2507.8 | 24155.4 |
ASUS ZenBook Duo UX482 | 3661.2 | 12308.9 | 381.7 | 4226.1 | 2796.1 | 15224.3 |
ASUS ZenAiO 24 A2401 | 5093.1 | 18488.5 | 706 | 2684 | 2675.6 | 15188.9 |
(参考)Apple MacBook Pro M1 | 15453 | – | – | 3702 | – |
PassMarkでは、いろいろな指標でベンチマークを測れます。
ZenBook 17 Fold OLEDでは、総合的にはかなりいい数値をつけています。
CPUはハイエンドなSurface Laptop Studioとも肩を並べて、2Dグラフィックでは頭一つでています。
ただ、別途GPUを内蔵していないこともあってか、3Dグラフィックは低い値です。
とはいえ数字上も、13.3インチのThinkPad X1 Foldからはかなりジャンプアップしており、画面を折りたためるPCとしてはかなり実用的なデバイスであることがわかるでしょう。
ゲームのベンチマーク
ゲームのベンチマークも試してみました。
ドラゴンクエストX Ver.1.51の結果は以下の通りです。
機種 | 最高画質 | 標準画質 |
ASUS ZenBook 17 Fold OLED | とても快適 7749 | とても快適 7041 |
Lenovo ThinkPad X1 Fold | 普通 3189 | 普通 4037 |
Surface Laptop Studio | とても快適 7461 | とても快適 7166 |
ASUS ZenBook Duo UX482 | すごく快適 10509 | すごく快適 11792 |
Samsung Notebook 9 Pen | 快適 6487 | 快適 6890 |
Lenovo ThinkCentre M75q-1 Tiny | とても快適 8581 | とても快適 10475 |
ASUS Zen AiO 24 A5401W | とても快適 9961 | すごく快適 11927 |
「快適」以上の評価が出やすいドラクエX Ver.1.51でも、13.3インチThinkPad X1 Foldは「普通」と厳しい評価だったのですが、Zenbook 17 Fold OLEDは「とても快適」でした。
ある程度のゲームであれば、快適にプレイできそうです。
しかし、ファイナルファンタジーXVでは以下の通りでした。
機種 | 標準画質 | 軽量画質 |
ASUS Zenbook 17 Fold OLED | 動作困難 1208 | 重い 2180 |
Surface Laptop Studio | 快適 6487 | 快適 8102 |
ASUS ZenBook Duo UX482 | 重い 2416 | 普通 3113 |
Lenovo ThinkCentre M75q-1 Tiny | 動作困難 1613 | 重い 2062 |
Samsung Notebook 9 Pen | 動作困難 1734 | 重い 2088 |
ASUS Zen AiO 24 A5401W | 動作困難 1811 | 重い 2298 |
(参考) GALLERIA ZA9R-R37 | 非常に快適 16283 | 非常に快適 19494 |
動作がめっちゃサクサク、自由自在にモード変形できる!
なんといってもこのスペックアップでうれしいのは、動作がめっちゃサクサクになったということです。
Bluetoothキーボードの画面からの着脱や、縦横の回転など、画面遷移のすべてがサクサク動いています。
これはやはり、高性能なCPUが搭載されているからこその恩恵でしょう。
極端に重いグラフィックなどの動作でなければ、動作の面でストレスを全く感じない、というのは、かなり未来を感じますね!
動画の編集や、書き出しは?
Zenbook 17 Fold OLEDでは動画編集や書き出しはできるでしょうか?
実際には専用のGPUが搭載されておらず、CPU内蔵のグラフィック処理となるため、処理によっては結構重くはなりますが、できることにはできます。
Xperia PRO-Iのレビュー動画(21分25秒)をベンチマーク代わりに書き出ししてみます。
ソフトはDavinci Resolve Studio 18.3(有償版)を利用しています。
Full HD画質(1080p)での書き出し
Full HD(1080p)での書き出しをした場合の書き出し時間は以下の通りです。
(いずれも、4K画質での編集を1080pで書き出しています)
専用のGPU搭載PCに比べれば時間はかかってしまいますが、比較的頑張ってくれている感じです。
22分程度でできるとなれば、1080pであればある程度使い物になりそうです。
この書き出しは、My ASUSアプリ上で「パフォーマンスモード」を用いた場合の最小時間です。
書き出しの際には、付属のAC-USBケーブルを用いた充電が必要です(別の低速USBケーブルを用いた場合や電源接続していない場合は、だいぶ時間が伸びます)。
4K画質での書き出し
4Kで書き出すと、書き出し時間は以下の通りです。
4Kでも、Intel Quic Syncでの書き出しであれば25分程度で書き出せます。
専用GPU非搭載の割には、ハイパフォーマンスだと感じますよね。
たぶんグラフィックを増強するのはハード的に難しい点もあるのかもしれません。
個人的には、ROG Flowシリーズみたいに外付けGPUが出てくれたりすると、また面白いことになりそうな気がします。
動画編集自体は、結構サクサク操作できます。便利にできるのは非常にうれしいところ。
まとめ:完成度の高い、未来を感じられる画面折りたたみPC!
ASUS Zenbook 17 Foldは、かなり完成度の高い「未来のPC」に仕上がっています。
PCの厚みこそありますが、シーンに応じて最適な使い方に変形できます。
デスク上では大画面で、ひざの上では折りたたんでノートPCスタイルで…など、自在に使えるのが非常に便利。
価格こそ649,800円(税込)と高く、なかなか手を出せる値段ではないかもしれませんが、「夢が現実になる瞬間」を見た気がします。
ガジェットファンにとっては、これはめちゃくちゃワクワクするデバイスです。
とはいえ、ASUSとしては初めての画面折りたたみPCということもあり、今後の進化にも期待したいところです。
個人的には、現状のZenbook 17 Foldの課題は意外にもBluetoothキーボードかもしれません。
充電が面倒だったり、本体に磁石でくっつけて使う運用の際には少したわんだり、タッチパッドを使ったマウス操作がちょっとしにくかったりと、一番不満に思う点はキーボードにあるように感じたので、この点が改善すると嬉しいですね。
また、不満というよりは期待、という点ですが、もう少し薄く軽く、そしてペンも使えるようになったらより良い気がします。
Zenbook 17 Foldのような端末で、手書きメモができるようになったら最強な気がします。
ただ、使っていてほんと便利に感じています。
画面折りたたみPC、ホントこれからも期待していきたいと思います。
▼動画でもレビューしています。
▼ThinkPad X1 Fold(2020年発売の13.3インチ)もレビューしています。
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